アラフィフになって考える100年ライフ

「ものづくり」を通したライフ・シフトを実践するため,スキルと健康を高めていくブログ

ベンチャーの経営者があえて奇人変人を演じる理由

今回の出張は、あるIT関連の大規模な展示会へ視察に行き、最先端の技術動向について調査すること.いくつか基調講演が行われたので,参加して聴講した.

講演者の1人は,あるベンチャー企業のCEOだった.経歴をみると,有名大学を卒業したのち、しばらくプログラマーとして放浪していたとのこと.私と大体同世代.

プログラマーで放浪?わけわからん」

というのが私の最初の印象.で,話し始めて1分もしないうちに,私の最初の印象が正しいことがわかった.

 

「いやー,今日のためのスライドは全然作ってないんですよ」

「寝坊して急いでこちらに向かったら,途中でパソコン忘れたことに気がついて.でもiPadはかろうじて持っているので,なんとか今日のプレゼンは出来そうです」

 

そんなどうでもいい前振りをして,自分が如何に奇人変人なのかをアピールするような語り口だった.こういう講演者に対して,だいたい普通の人が思うのは,

ベンチャーの社長だから変わっていても仕方ねぇよな(苦笑)」

そんなところだろう.真っ先に想起するのはホリエモンってところか.

 

以前にも私は似たような講演者を目にしたことがある.

ある学会の特別講演の講演者がベンチャー企業の社長だったのだが,この講演者は開始してから10分くらいで,

「今日はもう話すことがなくなった.あなた方から私に質問してください」

そんなことを言い出した.講演時間は1時間だったけど,開始10分で話すことがないなんて,何を言ってるんだコイツは?と驚いたことがある.

講演の準備ができないくらい多忙なら,最初から安請け合いするなって.わざわざ聴きに来た人たちの時間を無駄にしたという感覚がないことに呆れてしまった.

 

今回も「またベンチャー野郎が変なことをするんじゃねぇのか?」と思いながら,黙って聴いていたら・・・

意外や意外

ややエキセントリックな内容を含んでいたが,話の仕方が少しずつマトモになっていった.非常に探究的で,研究者に近い考え方をしている.スライドを全然作ってないと言ってたが,ちゃんとスライドを用意していた(過去の講演スライドの使いまわしで,今回のためにスライドは作っていないという意味だったのかもしれない)

 

最初の奇人変人ぶりは嫌悪感を抱かせるに十分だったけど,講演の内容は非常に興味深く,おそらく聴衆の中にはここの企業ブースでデモを見たいと思った人が大勢いたのではないか

そう考えると,このような奇人変人ぶりは聴衆の興味を引くために計算ずくでやった演出なのかもしれないと思った.同じ講演内容でも,ダークスーツとネクタイの生真面目なサラリーマン風の男が淡々とセールストークをしても聴衆には響かないだろう.

ホリエモンも似たようなものだ.過激なことをわざと言って世間を騒がせることで注目を集めるよう仕向ける.だけど,彼の書いた書籍をよく読むと,意外とマトモな考え方をする人間なのが分かる.

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そこで,ハッと気がついた.

ベンチャー企業は最初は知名度ゼロ.そのような状態から顧客の注目をどうやって集めるのだろうか?どうやって印象に残るようなことをするのだろうか?

品質のいいものや,世の中にない新しいものを作れば最初は業界で注目される.だけど,長年の技術の蓄積がモノをいうエンジニアリング分野であれば別だが,IT技術は模倣されやすい.すぐ後発企業に追いつかれて注目されなくなる(だから新規参入も容易).

 

ではどうすれば目立ち続けることができるのか?

それは,CEO自身が目立つことも戦略の一つとしてありうると思った.つまり,みんなプチ・ジョブズになるというわけだ.

昔,TVタックルという番組で,ビートたけし大竹まことらの面々にチームラボのCEOが参戦し,ブッとんだ発言をしてなかなか存在感を出していた.あれも計算の上での発言だろう.

今回のような展示会も全国の企業関係者が大勢参集する.そのような場で,他の基調講演者と異なる一風変わった言動をすれば明らかに目立つ.効果覿面だ.

さらに,もし大企業のCEOが奇人変人だと社員は不安感しか抱かないが,ベンチャーのCEOが普通のサラリーマンのように平凡だと,逆にそれは不安である.変化の激しい世界では,常人を超える存在感が従業員に安心感を抱かせることもあるだろう.

 

ベンチャーのCEOは,自らを奇人変人のように演じ続けることがあらゆる面でベターであると判断しているのではないか?

そう考えると,彼らは表面で見えるほど実際はブッとんではいない.むしろ常識人であるが故に,顧客に強い印象を与えたり,周囲を安心させるためにブッとんだ姿をあえて演じるのだろう

加えて,そういう姿を演ずることで,ひょっとすると自分自身をマインドコントロールして奮い立たせているのかもしれない.

 

もちろん,本人から聞いたわけじゃないので,あくまで憶測です.

どうも私はベンチャーのCEOのような人種が苦手だったけど,今後はそういう見方をしていきたい.