アラフィフになって考える100年ライフ

「ものづくり」を通したライフ・シフトを実践するため,スキルと健康を高めていくブログ

論文査読に関するオトナの事情と対応

先日,ある海外のジャーナルから論文の査読依頼が来ていて,今週〆切だったので読んでみた.

ここのジャーナルは以前私の論文も採択されたところなので,まぁ恩義もあるし引き受けようかと思った.通常はよほど自分の専門に近い内容じゃないと断るんだけどね.

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で,今回の論文を熟読したところ・・・

コンセプトは悪くない.やることも明確だ.

技術的に新しいところはほとんどないが,きちんとシステムが完成されていれば有用性が高いものとなるので論文としての価値はある.

だけど・・・

結果とその考察がかなり雑.私の感覚ではリジェクトものです.筆者はPh.D.らしいけど,ほんまかいなと疑ってしまった(それくらいお粗末).今回はよほどのことがない限り通すつもりでいたので,正直困ってしまった.

 

まぁでも,このまま採録するわけにもいかないので,特にマズいと思った点のみ3つ指摘した.それは,

  • 実験データの評価方法に関する点
  • 実用性を考えると,扱っている問題がシンプルすぎるという点
  • 比較検証が全く行われていない点

これらを指摘し,その改善案も示した(例えばこう主張すればいいよ,ここはこう改善することをお勧めします,という具合で).最終判断はMajor Revisionにし,Rejectにはしなかった.

 

ちょっと厳しいかなと思ったけど,酷い内容だったらきちんと指摘してあげる方が執筆者のためになる(執筆者が確信犯のときもあるけど).すんなり通してあげることだけが親切ではない

そう思って,システムから査読コメントを入力した.

 

入力が終わって,自分の査読コメントを確認したところ・・・

 

おや?

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査読者が他に3人いるらしい(Reviewer 1, 3, 7).それに,他の査読者のコメントが読めるじゃないですか!これ,システム上の不備じゃないの?笑

他の3人の査読結果を見ると,Accept, Major Revision, Minor revisionだった(Reviewer 4 のMajor Revisionは私)

 

それで,AcceptとしたReviewer 1のコメントを読むと,なんとまぁ・・・・(苦笑)

この人,イントロしか読んでないね.研究の目的とか意義とか,それだけで判断している.べた褒めだったので,我が目を疑った(笑).

確かに目的や意義は悪くないけど,論文なんだから結果と考察が一番重要.いくらお題目がスバラシくても絵空事で終わったんじゃ意味ない

Major RevisionのReviewer 3のコメントを読むと,これもビックリした!

この人は英語の表現がマズいという指摘しかしてない.ちなみに,この論文の筆者はエジプト人なので英語ネイティブではない.だから英語の指摘は(彼らに限らず)別に珍しくもないけど,この指摘だけでMajor Revisionって言えるんか?

ここまで読んだ段階で,Minor Revisionの判定をしたReviewer 7のコメントは読む気がしなくなった.どうせくだらない指摘だろう.

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うーむ・・・

私も以前ここのジャーナルにフルペーパーを投稿して採録になって,まぁまぁ査読者から指摘を受けた.少なくとも今回よりはるかにマシなコメントだった.

だけど,今回の査読者があまりにも酷いので,今後ここに投稿するのは辞めた方がいいかもと思ってしまった.これで査読と言えるのだろうか?スルーパスのハゲタカジャーナルと大差ない.

日本のジャーナルでも,掲載論文数をキープするためにほとんど形だけの査読というところもあるが,私は出来るだけ執筆者に有益になるようなコメントを残したいと思っている.可能な限り本質的な部分をチェックするつもりだ.

だけど,「あくまで私の考えでは」というスタンスでコメントをする.それはつまり,レスポンスレターで反論できる余地を残しておくことでもある.

なぜなら,私の考え自体が偏っている可能性も否定できないからだ.

 

いろいろ出版社や学会のオトナの事情から,そう簡単にReject判定できないのも分かるが,査読が形骸化したらハゲタカジャーナルと何が違うのだろう?

程度の低い論文が投稿されたら,教育的な視点から出来るだけ有益なコメントを残して,再投稿を促すようにすべきだろう.

 

中には,共著者の指導教授に対して

「投稿する前にちゃんとチェックしろよ!」

と言いたくなることも多々あるけどね(笑)