アラフィフになって考える100年ライフ

「ものづくり」を通したライフ・シフトを実践するため,スキルと健康を高めていくブログ

私が国際会議でオーラルよりポスターで発表する理由

学会発表のスタイルは通常2種類ある.オーラルとポスターだ.オーラルは発表時間が決められ,スライドを使って大勢の聴衆の前で研究内容を発表するいわゆる「講演」の形だ.

 

一方,ポスターは決められたブースに研究内容をまとめたポスターを掲示し,1時間とか1時間半の間,発表者はそこに立って,興味をもって聞きに来た聴衆に説明して,ざっくばらんな議論をするという形だ.学会によってはデモンストレーションもできるようになっているので,ミニ展示会に近い.

どこの学会でもそうだが,ポスターよりオーラルの方が格上だ.

だけど,私は国際会議での発表は,あえてポスターで発表することにしている.その理由は2つあります.

1. 自己盗作の危険性を避ける

私がこれまで発表してきた国際会議では,オーラルの方は大抵4ページ以上のフルペーパー投稿となっており,プロシーディングスが書籍として出版されたり,IEEE Xploreでオンライン公開されたりする.それがちょっと問題なのだ.

なぜ問題なのか?

一度出版されると,そこで書いた文章や図と同じものを使い回せないからである.もし使い回すと,たとえ自分が書いたものでも「盗作」とみなされ,悪くすればペナルティを課せられる.

自分で書いたものなのに「盗作」扱いされるなど,納得のいかない話だけど,それが現状なので仕方ない.

一方,ポスター発表の場合,多くて2ページの概要となる場合が多く,中には「600words以内,図表なし」という条件を課してくるところもある.これらは学会当日参加者に概要集として公開されるが,学会終了後は公に残らない.だから,ここで使用した文章や図をそのまま使い回して,フルペーパーに発展させることも出来る.

 

プロシーディングスを最終成果とするのであれば,オーラル発表で全く問題ないのだが,普通はジャーナルのフルペーパーを最終的な業績とするので,過去の発表内容が公に残っていると,著作権やら盗作やら後で色々めんどくさいことになる.

もちろん,著作権に関しては申請すれば他紙への掲載許可が降りることもあるが,そもそもそんな申請をすること自体が面倒だし,したとしても文章のコピペは不可能だ.日本語だと同じ内容を別の言い回しで書き直すことも苦ではないが,英語となるとなかなか骨の折れる作業となる.

正直,そのような無駄な労力をかけるくらいなら,少しでも内容をブラッシュアップする方に労力を費やしたい.だから,私は発表の際は最初から論文をプロシーディングスに残さない形で発表し(つまり,ポスターセッションで発表し),その時使用した図や文章を使い,それに追記する形でフルペーパーに仕上げる.その方が手間がかからない.

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2. 質問者の余計な思惑に付き合う必要がない

学会発表で大事なのは,論文が公開されることではなく,現地で自分の発表を聞いた人たちから生の感想やアドバイス(時には言いがかり)を聞けることにある.

そう割り切れば,数分程度のフォーマルな質疑しか出来ないオーラルより,あまり時間を気にせず,気楽にざっくばらんに意見交換が出来るポスターの方がじっくりと本音が聞ける.

 

それと学会にもよるけど,特に若い研究者が多いオーラルセッションの場合は,「どうでもいい質問」を思いつきで機関銃のように言ってくる質問者もいる.それは多分,聴衆の中にいる偉い先生方の前で目立ちたいだけだろう

そして,女性発表者に対する質問の多くは,同じ女性研究者であることが多いように思える.このような見方は偏見かもしれないが,女性同士の議論だと対抗意識のようなものが見え隠れするのは気のせいだろうか?

もちろん,オーラルが全部が全部そうではないが,どんな学会でもオーラルは発表者だけでなく質問者も目立つ.そういう目立つ場では様々な思惑が交錯するし,それは万国共通のように思える.研究の本質とあまり関係ない意図に振り回されるのは発表者としては迷惑だし,ハッキリ言って時間の無駄だ.

 

一方,ポスター発表では発表者と質問者が基本的に一対一だから,質問者の自己アピールという目的にはそぐわない.純粋に発表者の研究を面白いと思った人だけが質問してくる.かしこまる必要がないので本音が出てくるし,時にはかなり有用なアドバイスが出てくることもある.これがオーラルにはない魅力である.

欠点としては,ポスターを現地まで持っていかなきゃいけないことだ.大体A0くらいの大きさがあるので,専用の筒に入れないと持ち運べない.そして,大抵の航空会社ではこの大きさの筒の運送費は無料ではない(私がANAで北京に行った時は,5000円ほど追加料金がかかった)

いろいろ模索した結果,A0のポスターを上下で分割印刷してA1を2枚とし,筒の長さを短くすればスーツケースの中に斜めに押し込むことができる.裏技です(笑)

このような2つの理由で,私は国際会議の発表はポスターと決めている.